2ページ目 | 伝えるってナンだ?

(1)プロローグ 【伝えるってナンだ? 情報保障から考える】

自分には肢体障害がある。小学校に入る前からワープロを使っていた。筆記が遅く、それをワープロなりパソコンが障害をある程度カバーしてくれている。高校3年からは、ワープロで授業のノートを取り始めた。では、他の障害をもつ人は?大学で情報と福祉の両方を学びたいと思い、そういう学部・学科に入ることができた。

入った学年には、肢体・聴覚・視覚に障害がある学生がいた。この年から、その学部初の講義中の情報保障(知る権利を保障すること)がはじまった。講義中の情報保障を紹介すると、聴覚に障害がある学生に対しての、講義中の教授の言葉を書き取る<ノートテイク>・視覚に障害がある学生に対しての板書を読み上げる<リーディングサービス>などがある。ノートをパソコンで作っていた自分は、視覚に障害がある学生にノートをメールなどで後日送っていた。スクリーンリーダーというソフトを入れれば、パソコン画面の文字情報を読み上げてくれる。こうした場面を日常的に見ることで、障害をパソコンがカバーする可能性を体感できた4年間だった。

卒業後いくつかのホームページ制作や運営に関わった。その中で、もちろんWEBアクセシビリティーにも配慮してきたつもりだ。でも、年々WEBアクセシビリティー特に画像に対して文字情報をつけるalt属性の文章を考えるのが、自分の中で雑になってきたなあと思った時がある。大学時代に日々感じてきたことを忘れているなあと思うわけである。

そんなことを考えていたら、去年放送された<聞いて聞かせて ブラインド・ロービジョンネット>で澤村祐司さんと穴澤雄介さんが、「車で移動すると、どこまでも同じ音だから地理感が分からない。電車だと、鉄橋もあるし停車する駅を順番に言ってくれるから、地理感が持ちやすい。」と対談されていたことを思い出した。



聴覚に障害がある人も視覚に障害がある人も電車内での睡眠には、人一倍気を使うそうだ。起きた時、自分がどこにいるかがわからなくなるというのがその理由らしい。自分もよく電車で乗り慣れてない場所に行くことがある。電車ですっと寝てしまい、起きた時降りる駅を過ぎていないかひやりとしたことがある。

情報というものは、一度知ってしまえばなんてことはないことがほとんどだ。その情報取得の場面で、何かしらの差しさわりを抱えている人もいる。この連載ではそうした側面から、「伝える」について考えていきたいと思っている。

この「伝わるってナンだ? 情報保障から考える」は毎月第3木曜の夕方に更新していきます。次回は、障害のある人と情報保障について対談形式で考えていきます。