(4)在日外国人と・・・【伝えるってナンだ? 情報保障から考える】

「伝わるってナンだ? 情報保障から考える」の4回目です。4回目も前回に引き続き“在日外国人と情報保障”を対談形式で考えていきます。
前回はこんな話でした。

Chabin(以下、C):
戻らないと決めた日本に戻ろうとしたきっかけは?

神田すみれさん(以下、神):
台湾で知り合った、現在の夫が日本に一緒に戻ろうといってくれたからです。日本には戻る場所はないと思っていたので、自分の家にこればいい、自分の家だと思えばいい、と言ってくれたのは大きかったですね。彼は元々2年の留学の予定だったので、予定通り帰るということで。私も、このチャンスを逃したら一生日本に帰ることはできないだろう、もう一度日本で暮らすことにチャレンジしてみよう、と思ったんです。

C:
帰国してからはどうでした?

神:
大変でしたが、アメリカから戻ってきたときと比べると天と地です。物理的な居場所があるかないかは大きな違いでした。どこの誰かわからないような私を数ヶ月おいてくださった彼の両親にはいまでもとても感謝しています。

C:
しんどい時はしんどいもいえなくなります。きつかった時期を思い出しました。変に自分を過小評価したりしてたこともありました。

神:
うんうん、わかる、そのかんじ本当にしんどいときって、助けを求めることすらできなくなっちゃうんだよね。

C:
日本に帰って落ち着いてから、何を感じました?

神:
これからどうしようという不安、かな。自分が何をしたいのかもわからなかったですし。光のみえないトンネルにいた感じです。

C:
光のきっかけは?

神:
瀬戸市国際センターでのボランティアコーディネートの仕事が大きな転機でしたね。愛知万博の開催に合わせて、ホームステイ事業の運営をする仕事でした。仕事の内容は、ホストファミリーの募集や研修、ホームステイゲストの募集、ホストファミリーとゲストとのマッチング等でした。

C:
大変そう。

神:
それがとても面白かったんです。周りからも褒められることがあったりして。

C:
仕事とかタスクに取り組む時、周りの人の存在とか考え方ってものすごくおおきいんですよね。

神:
そうそう!このときはすごく助けられた。それまではなかった評価、海外での体験がマイナスではなく、プラスになったんです。そのとき、面白いなあと思いました。

C:
その仕事を経験してからの興味は?

神:
本当に関わりたいことを模索しはじめました。この土地でやっていく覚悟ができた、というか。
大学院とNたま(*)を同時に開始したんです。

C: 
大学院では、どんな研究を?

神:
「東海地域に暮らす外国人」です。
論文は結局、外国人支援に関わる人たちについて書きましたが。

C: 
あちらこちらに赴いたのでは?

神:
そうですね、高山のソムニードには毎月通いました。
他にもいろんな人にインタビューさせていただいたり。外国人医療センターでスタッフをしていたのもその頃ですね。外国人相談者が行政の相談窓口にきても、そのあとのフォローができないことが悩みでした。同じ時期に、仕事では出稼ぎ労働者、院ではアジア各国からの優秀な留学生と付き合うなかで、留学生に労働者の現状を知ってもらいたい、というおもいもあり県から助成金をもらって、同行通訳を派遣する活動をはじめました。

C:
悩みがつきないという感じですか?

神:
私の悩みではなく、社会制度、システムの悩み、ですね。このころから、私の個人的な悩みとは 別に社会システムをなんとかしたい、という想いがでてきたのでしょうね。

C: 
なにか変えるために考えはありました?

神:
なにもないです。いまも手探り、模索です。
出会った人の困りごとをその人だけの困りごとにしないこと。は意識しているかな。
わたし自身の困りごとも、きっとほかにも同じように困っている人がいるはず、という視点でその問題を解決することが大事だとおもっています。

C: 
その人だけのこまりごとにはしないように 具体的には?

神:
制度をつくったり、サービス化する、というかんじです。
院のときは、同行通訳を派遣する団体を立ち上げたりしました。
いまは、外国人に限りませんが、おせっかいプロジェクトという団体で、地域の人たちの困りごとの解決や相談にのるという活動もしています。

C: 
すみれさんの行動力すごいです。

Nたま(*)  
「次世代のNGOを育てるコミュニティ・カレッジ(NGOスタッフになりたい人のためのコミュニティ・カレッジ」の通称。将来、NGOスタッフとして活躍する意志のある方を対象にした半年間の研修プログラム。
特定非営利活動法人 名古屋NGOセンターが実施・運営をしている。

ここまでは、神田さんにフォーカスしました。話は佳境へと入っていきます。

この「伝わるってナンだ? 情報保障から考える」は毎月第3木曜の夕方に更新していきます。次回も在日外国人と情報保障について対談形式で考えていきます。

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